秋田県・乳頭温泉にある「秘湯 鶴の湯温泉」は日本一の秘湯とも言われ、築100年以上の茅葺の建物がいつかの古い時代に迷い込んだかのような錯覚を起こさせます。山奥で浸かる乳白色の温泉に心癒され、山菜や川魚を味わい、素朴で温かいゆったりとした時間を過ごすことができる宿です。
2021年1月、東北の雪見温泉なんていいな〜と思ってJRダイナミックレールパックで探していたら、秘湯で有名な鶴の湯温泉の1週間後の土曜日に空きを見つけました。もちろん速攻で予約。ネットやメールでは予約できず、6ヶ月前から電話でしか予約を受け付けていないはずが、JRのプランに出てくるのです。コロナの影響か土曜日の予約が1週間前に取れてとてもラッキーでした。
雪深い冬にお邪魔し、白銀の最高の景色と素朴で美味しい食事、そして何より湧きたての温泉を満喫して来ました。
【追記】2023年12月に再訪し、情報更新しています。
アクセス
東京から秋田新幹線に乗って約3時間、田沢湖駅へ。田沢湖駅から乳頭温泉行きの路線バスに乗り約40分、「アルパこまくさ」バス停で降り、迎えに来ている鶴の湯温泉のバスに乗ると10分ほどで鶴の湯温泉に着きます。
秋田新幹線・田沢湖駅。新しくて綺麗な駅です。雪が積もっていました。田沢湖駅に着いたら、乗る路線バスの時間と送迎をお願いしたい旨を宿に電話すると、アルパこまくさのバス停まで送迎バスで迎えに来てくれます。
駅からは乳頭温泉行きの路線バスに乗ります。14時20分発。
本当はJRからの予約だとアーリーチェックインで14時にはチェックインできるのですが(通常は15時。)、新型コロナウイルスの影響で13時20分発の丁度いいバスが運休になっていました。
【追記】2023年12月には運休はなく、全てのバスが運行していました。
バスの時刻表はこちらからご確認ください(乳頭線です)→羽後交通株式会社
路線バスに揺られて40分ほどで、バス停「アルパこまくさ」に到着です。アルパこまくさまでの運賃は630円でした。Suicaの類は使えないのですが、PayPay、d払いが使えたのが以外。キャッシュレス派にはありがたい選択肢です。
アルパこまくさというのは仙北市の施設で、登山の拠点にもなる場所らしく、日帰り温泉施設や食堂があり、火山防災ステーションにもなっていました。
アルパこまくさで降りたら、迎えに来ている送迎車に乗り換えます。路線バスに乗っていた人は1人残らずアルパこまくさで降りて、皆この送迎車に乗りました。笑
【追記】2023年12月に行った際は、アルパこまくさで降りない方もいらっしゃいましたが、降りた方はほとんど鶴の湯温泉送迎バスに乗っていました。
送迎車は真っ白な雪の中を進みます。モミの木的なものがたくさん生えていて、クリスマスっぽくもあり、全く別の世界へ連れて行かれるようです。
【追記】送迎バスでは、運転手さんが運転しながら田沢湖のよく見える場所を教えてくれたり、観光案内をしてくれたりと、楽しい雰囲気でした。2021年宿泊時にはこういった雰囲気はなく淡々とバスを運転されていましたが、きっとコロナ禍だったから自粛していたんでしょうね。本来のあり方に戻ったようで、なんだかほっこりしました。
チェックイン
送迎バスで10分ほど揺られ、15時頃到着。田沢湖駅よりも更に雪が厚く積もっています。そして鶴の湯お馴染みの入り口。とても風情があって、昔懐かしい感じがします。
左側の建物が、風情があってみんなが泊まりたがる「本陣」。お部屋の中に囲炉裏があって、夕食は囲炉裏を囲んで食べられるそう。右側の建物が今回私たちが泊まる「2号館、3号館」で、所謂湯治棟です。
チェックインは、この道を進んで左にある事務所で行います。
事務所にはお土産も売っているし、飲み物もキンキンに冷やされて売っています。瓶のコーラやビールもあり、おすすめは袋に入ったリンゴジュース。部屋付けできるので温泉に浸かった後に事務所に寄って好きな飲み物を気軽に飲めます。ビールは市価より高いですが、最高の温泉に浸かった後にキンキンに冷やされたビールが飲めるのなら安いぐらいです。
事務所の営業時間は7時から22時まで。物販もこの時間なので、夜部屋で飲みたい場合などは時間に余裕を持って購入した方が良さそう。
お部屋
鶴の湯温泉はいくつかの館があり、1号館、2号館、3号館と、本陣、新本陣、東本陣、離れ本陣。囲炉裏があるのは本陣1〜5番の5部屋と新本陣5番、東本陣1番・5番、離れ本陣11番・12番の計10部屋のみです。
お部屋でも事務所でも、敷地内は携帯電話の電波は飛んでいないのですが、Wi-Fiがあります。ただ、繋がりづらい時間帯もあったので、過信しない方がいいかも。
3号館
鶴の湯の一番人気のお部屋は一番古くて囲炉裏の付いた本陣のお部屋ですが、JRだとそのお部屋の予約はできないようで、今回は一番リーズナブルでこじんまりとした2、3号館のお部屋に宿泊しました。2、3号館は湯治客用の所謂湯治棟で、6畳一間の部屋は超シンプル。扉を開けたらすぐ6畳のお部屋で、スリッパは廊下で脱ぎます。トイレも洗面台も、もちろんユニットバスもありませんし、テレビも冷蔵庫もなし。バスタオル、手拭い、歯ブラシと浴衣一式くらいしか置いてません。トイレ、洗面は共用。
お部屋には強力な暖房器具があり、外気温が氷点下でも暑いくらい暖まるので心配は要りません。お布団もフカフカです。
2、3号館はひと続きになっていて、2号館の1階には日帰り温泉に来たお客さんが使えるトイレや休憩所などもありました。ビールも売っているので夜中にお酒が飲みたくなっても大丈夫。
2023年12月に行ったときは、なんとお酒が売っている唯一の自販機が故障中。なので、お酒が飲みたい場合は、事務所で買うか、夕食時に注文するしかありませんでした。
離れ本陣
2023年に泊まったのは、離れ本陣。先ほどの平面図にも「離れ本陣」の名前は載っていないのですが、入り口のすぐ近くにある11、12と書いてある建物が離れ本陣です。
こちらのお部屋、直接予約でも予約できないお部屋で、JRが1年中部屋を押さえているらしく、JR経由(びゅうトラベル)で予約しないと泊まれないのです!人気でなかなか空きが見つからないのですが、たまたまキャンセルが出たところを予約できたっぽく、ラッキーでした。
ジャジャン!囲炉裏付きのお部屋。けっこう広くて良い!お部屋の奥の方には暖房器具と、クローゼットがあります。クローゼットの中には浴衣一式とバスタオル、手拭い、歯ブラシ。金庫もありました。
お布団は夕食を下げに来てくれた時に敷いてくれます。こちらのお部屋も暖房が効いているので暖かく、布団もフカフカで気持ちよく眠れました。
3号館のお部屋とは違い、洗面・トイレ付きです。この空間は寒いので、冷蔵庫代わりに持ち込んだお酒とかチーズを置いてました。
温泉
鶴の湯には白湯、黒湯、中の湯、滝の湯という泉質の異なる4種類の源泉が湧いています。いずれも乳白色なので見た目は同じようですが、効能や肌触りは違うそうです。
露天風呂は大きな混浴露天(鶴の湯といったらココ)と、女性専用の露天が2つありますが、中の湯の隣にある女性専用露天は冬季は閉鎖されていました。その他に黒湯、白湯、中の湯があり、これらはそれぞれ建屋の中にあります。また、貸切風呂2つと、内湯男女1箇所ずつは宿泊者専用です。
白湯、黒湯、中の湯の建屋内の温泉はいずれも白いにごり湯で、古い建屋に脱衣所と浴槽があるだけ。シャワーなどもありません。
白湯(美人の湯)
白湯は美人の湯、別名冷の湯と言われ、酸性泉で湯の色が白く、高血圧症やリウマチなどに効くそうです。泉質は塩化物泉、硫黄泉(含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩温泉)。加温・循環・消毒なしの源泉掛け流しで、浴槽温度が高い5~11月頃は加水しているようですが、冬季は加水もなく、源泉そのままを味わうことができます。
女性の方の白湯は写真のような感じで、5~6人は浸かれそうな広さでした。
黒湯(子宝の湯)
黒湯は子宝の湯、別名温たまりの湯とも呼ばれ、湯冷めの来ないことから不妊症、神経痛などによく効くそうです。普段は青みがかっていますが、天気が悪いと黒く、晴れると白くなるということです。
泉質は塩化物泉、硫黄泉(含硫黄ーナトリウムー塩化物・炭酸水素塩温泉)。こちらも加温・循環・消毒なしの源泉掛け流しですが、源泉温度が高いため加水しています。それでもかなり熱いお湯でした。
女性用の黒湯は2人でいっぱいいっぱいという感じの小さい浴槽でした。
中の湯(眼っこの湯)
中の湯は眼っこの湯と呼ばれ、神経系統の病気や眼病に効き目があります。泉質は塩化物泉、硫黄泉(含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩温泉)。加温・循環・消毒なしで、浴槽温度が高い7~9月のみ加水あり。こちらも女性用は小さく、2~3人でいっぱいという感じ。ただ、中の湯経由で混浴露天風呂に続いているので、混浴露天風呂の前座という感じになっていて、あまり長居する人はいない模様です。
内湯・貸切風呂
宿泊者専用の内湯と貸切風呂にはシャワーとカラン、シャンプー・コンディショナー・ボディーソープがあります。ドライヤーは宿泊者専用の内湯のみ設置。事務所でドライヤーを借りることもできるそうです。
貸切風呂は2室あり空いていれば無料で入れますが、タイミングを見計らわないといつも満室で、何度も足を運ぶ羽目になりました。源泉は黒湯だったので熱かったです。
女性専用露天
冬季なので女性専用露天風呂は黒湯の先にある方にしか入れません。黒湯から直接行くことができます。黒湯が熱すぎるので、とりあえず黒湯に20秒くらい浸かってすぐこちらに来る、というのが自分のルーティンになりました。浴槽はかなり広く、30人くらいは余裕で入れるのではという大きさだけど、女性客が少なかったこともあり、ほぼ貸切でした。温度がぬるめなのでずっと入っていられます。山が背後に迫っていて雪見が楽しめ、足元湧出。底からポコポコとお湯が湧いてきます。鶴の湯温泉のハイライトは混浴の方なのでこちらはあまり人が来なくて穴場。私はずっとこちらでもいいと思いました。
大きな浴槽の隣には1人しか入れないくらいの小さい露天もありました。背後に迫る雪山がダイナミック。
混浴露天
混浴露天は一番大きな温泉。鶴の湯温泉の一番有名なお風呂です。こちらも足元湧出で熱いお湯が湧いていて、カップルやファミリーで一緒に入れるので人気があり、絶えず人が入っています。女性は右写真の右奥から浸かりながら入って来られるようになってはいますが、浸かるまでの動線も、目を凝らして見ようと思えば見えてしまいそうな感じなので、注意してください。
電話予約のプランだとチェックアウトが10時ですが、JRプランだと11時なので、その狭間の時間を狙って入りに行ったら、見事誰もいなくて夫と2人で独泉できました。2人だけでこの大きな露天風呂を独泉して浸かれるのはこの上ない贅沢!10時を15分くらい過ぎると日帰り温泉に来たお客さんが来たので少しの間の独泉でしたが、最高の時間でした。
【追記】2023年12月の宿泊時も同じ時間帯で独泉を狙いましたが、同じことを考えているであろうJR予約組が何組もいました。逆に、23時頃に行ったら自分たちの他には男性が1人入っているだけだったので、夜遅い時間も狙いかも。
食事
2,3号館だと1人1泊1万円くらいで泊まれるので、正直食事には期待していなかったのですが、地の物を使った料理はどれも素朴で美味しく満腹で、大満足でした。
夕食
2号館、3号館の宿泊客は、本陣6,7番の広間的なお部屋で夕食をとります。時間は18時からの固定です。
【追記】離れ本陣では、お部屋の囲炉裏に炭とランプを持ってきてもらい、囲炉裏端で食事です。最高!
まずはお酒のメニューから。ビールに日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン。意外となんでも揃っていて、銘柄にこだわりがなければ十分なラインナップです。
JRのダイナミックレールパックのツアーでは、献立右側の「二の膳」が追加になり、日本酒「秀よし」の純米酒1号瓶を1人1本貰えてお得でした!
山菜・きのこ各種、岩魚の塩焼き、岩魚の刺身、こまち団子、おそばなど・・・。秋田名物のいぶりがっこも食べられました。2023年も似たようなメニューでした。
そして名物、山の芋鍋。味噌仕立ての優しい味でほっこりします。岩魚の塩焼きと一緒に囲炉裏で温めて出してくれました。どれも素朴な味付けだけどとても美味しかったです。炭水化物が多かったので、お腹がはち切れそうになりました。
朝食
朝食は、お部屋が2,3号館でも離れ本陣でも、本陣6,7番に集まって食べます。7時〜8時半の間の好きな時に行ってOK。岩魚の甘露煮や白菜の煮物など。漬物や梅干しなど味濃いめのおかずもたくさんあって、ついついご飯をおかわりしてしまいました。また温泉に浸かりに行きますよ〜!
チェックアウト
JR予約の特典で11時までのレイトチェックアウトができ、ゆっくりすることができました。チェックアウト後も日帰り温泉のお客さんに混じって温泉に浸かってOKで、荷物も事務所の方で預かってもらえたので、11時40分のバスまでひとっ風呂浴びることができて良かったです。帰りのバスは朝までに予約する必要があります。
田沢湖駅前の売店で、鶴の湯で買って食べて美味しかった「いぶり卵」と日本酒を購入し、新幹線で最後の秋田を感じながら大満足の中帰宅しました。
まとめ
日本一有名な秘湯ということで、秘湯を楽しみにする反面、人がたくさんいて芋洗い状態なんじゃないかとか、寒くて寝られないんじゃないかと少し不安もありましたが、全く気になりませんでした。秋田弁?を喋る宿の方との素朴な会話や、湯治客同士の会話を聞いたり、美味しい食事を食べたり、足元湧出の超新鮮なにごり湯に浸かってのんびりしたり。何より何百年も前にタイムスリップしたような、異世界へのトリップという感じがして、すごくリフレッシュできました。そして、やはり人気の囲炉裏付きのお部屋は更に風情があって素晴らしかった!
秘湯の良さに触れるとともに、冬以外の季節にも来てみたいと感じました。絶対にまた訪れたいと思います。そして、他の秘湯にも行ってみたいと感じました。
皆さんも、タイムスリップして秘湯でゆっくりしてみませんか?